書類不備が起きやすい理由
中国側と日本側で求められる記載基準が違う
中国の工場が日常的に作成しているインボイスとパッキングリストは、中国国内の取引基準や中国税関の輸出申告に合わせたフォーマットです。日本の輸入通関で求められる記載基準とは異なる部分があります。
特に問題になるのは品名の書き方です。中国側では「PARTS」「GOODS」「MERCHANDISE」のような大括りの表記が習慣的に使われているケースがありますが、日本の税関はこの表記を認めません。品目が特定できない申告は審査の対象になり、通関が止まります。
工場担当者への指示が口頭・曖昧になりがち
「インボイスをちゃんと作ってください」という依頼だけでは、工場側は何をどう変えればいいかわかりません。日本側が求める記載基準を具体的に伝えていないと、毎回同じ不備が繰り返されます。
書類の不備は工場の問題ではなく、発注側の指示の問題であるケースが多いです。テンプレートと具体的な記載例を工場に渡すことで、ほとんどの不備は防げます。
インボイスでよくある不備パターン
品名が曖昧(GOODS・PARTS・MERCHANDISEなど)
最も多い不備です。税関は品名から商品の内容・HSコード・他法令の適用有無を判断します。品名が曖昧だと判断できないため、審査のために書類の提出を求めてきます。
品名は商品の内容が具体的にわかる表記にしてください。
- NG:GOODS / PARTS / MERCHANDISE / SUNDRY ITEMS
- OK:LED DESK LAMP / CERAMIC MUG / COTTON T-SHIRT / PLASTIC STORAGE BOX
複数の品目が混在する場合は、品目ごとに行を分けて記載します。
単価・数量・合計金額の不一致
インボイスの単価×数量の計算結果と合計金額が一致していないケースがあります。小数点の扱いや通貨換算のミスで生じることが多いです。税関は金額の整合性を確認するため、不一致があると確認が入ります。
発送前にインボイスの数字を必ず電卓で検算してください。合計行の金額と明細行の合計が一致していることを確認します。
原産国の記載漏れ・誤り
輸入申告には原産国の記載が必要です。中国製品なら「CHINA」または「MADE IN CHINA」と記載します。記載がない、または「ASIA」「UNKNOWN」といった曖昧な表記は不備になります。
RCEP(地域的な包括的経済連携協定)を活用して関税を減免する場合は、原産国の記載に加えて原産地証明書が必要です。発注時に工場に依頼してください。
荷送人・荷受人の住所が略式・不正確
荷送人(シッパー)と荷受人(コンサイニー)の会社名・住所・電話番号が不完全なケースがあります。略称・通称・旧住所が使われているケースも多いです。
会社名は正式名称、住所は郵便番号を含む完全な表記で記載してください。日本の荷受人情報については、日本語表記ではなく英語表記で統一します。
PROFORMA INVOICEをCOMMERCIAL INVOICEとして使用
PROFORMA INVOICEは見積書としての性格を持つ書類です。輸入通関に使えるのはCOMMERCIAL INVOICE(本インボイス)のみです。工場から送られてきた書類の表題を必ず確認してください。「PROFORMA INVOICE」と記載されている書類は通関申告には使えません。
パッキングリストでよくある不備パターン
重量・容積が実測値と大幅に異なる
パッキングリストに記載された重量・容積と、実際に港に届いた貨物の重量・容積が大きく異なるケースがあります。税関は申告内容と実物を照合するため、差異が大きいと検査の対象になります。
重量・容積は梱包完了後の実測値で記載してください。概算値や製品仕様書の数値をそのまま使うと誤差が出やすいです。
インボイスとパッキングリストの品名・数量が不一致
インボイスとパッキングリストは別々に作成されるため、品名の表記や数量が微妙に異なるケースがあります。たとえばインボイスに「LED DESK LAMP×100個」とあるのに、パッキングリストに「LAMP×100PCS」と書いてあると、同じ商品かどうか確認が必要になります。
2つの書類で品名・数量・単位の表記を統一してください。どちらか一方を先に作り、もう一方はそれを参照して作成すると整合性が保てます。
段ボール番号・梱包数の記載漏れ
パッキングリストには各段ボールの番号(例:CARTON No.1〜10)と、各段ボールの中身・重量が記載されている必要があります。この記載がないと、税関検査時に特定の段ボールを開封確認する指示が出せず、検査が長引きます。
工場への正しい指示方法
書類テンプレートを工場に渡す
日本の輸入通関で求められる記載基準を満たしたインボイスとパッキングリストのテンプレートを作成し、工場に渡してください。テンプレートには記載例(サンプル)を入れておくと、工場側が参考にしやすいです。
テンプレートに含めるべき項目は以下です。
- インボイス:日付・インボイス番号・荷送人・荷受人・品名(具体的)・数量・単価・合計金額・通貨・原産国・インコタームズ
- パッキングリスト:インボイス番号・品名・数量・梱包方法・段ボール番号・各段ボールの重量・容積・合計重量・合計容積
出荷前に書類のPDFを必ず確認する
工場から書類のPDFを受け取ったら、出荷前に必ず確認してください。確認のタイミングは「工場が梱包を完了してトラックに載せる前」が理想です。この段階なら修正が間に合います。
船が出てから書類の不備が発覚した場合、修正書類を船積書類に差し替える手続きが必要になり、時間と費用がかかります。
中国語での補足説明を用意する
工場の担当者が日本の通関要件を理解していない場合、英語のテンプレートだけでは意図が伝わらないことがあります。記載のポイントを中国語で補足したメモを用意すると、誤解が減ります。
特に「品名は具体的に書いてください(例:不可写GOODS,要写LED台灯)」「単価・数量・合計は必ず一致させてください」という2点は中国語で明示することをおすすめします。
インボイス・パッキングリストの正しい記載例と誤った記載例
インボイスの品名記載
- ✗ 誤り:GOODS / PARTS / MERCHANDISE / SUNDRY ITEMS(品目が特定できない)
- ✓ 正しい:LED DESK LAMP(LEDデスクランプ)/ CERAMIC MUG(陶器製マグカップ)/ COTTON T-SHIRT(綿素材Tシャツ)
インボイスの金額記載
- ✗ 誤り:単価USD10.00 × 100個 = 合計USD1,100(計算が合わない)
- ✓ 正しい:単価USD10.00 × 100個 = 合計USD1,000.00(単価×数量と合計が一致)
原産国の記載
- ✗ 誤り:ASIA / MADE IN PRC / 記載なし
- ✓ 正しい:MADE IN CHINA / COUNTRY OF ORIGIN: CHINA
荷受人の記載
- ✗ 誤り:〇〇株式会社(日本語のみ・住所不完全)
- ✓ 正しい:〇〇 CORPORATION, 1-2-3 〇〇, 〇〇-KU, TOKYO 100-0001, JAPAN / TEL: +81-3-XXXX-XXXX
インボイス表題
- ✗ 誤り:PROFORMA INVOICE(見積書であり通関申告には使えない)
- ✓ 正しい:COMMERCIAL INVOICE(本インボイス)
パッキングリストの重量・容積
- ✗ 誤り:製品仕様書の寸法をそのまま記載(梱包後の実測値と異なる)
- ✓ 正しい:梱包完了後の実測重量・実測容積を記載(例:段ボール1箱あたり N.W. 20kg / G.W. 22kg / MEAS. 0.5CBM)
書類不備が発覚したときの対応手順
通関書類に不備があると、フォワーダーまたは通関業者から連絡が来ます。対応手順は以下です。
- 不備の内容を通関業者から確認する(何がどのように不備なのか)
- 工場に修正書類の作成を依頼する
- 修正書類を通関業者に提出する
- 再申告・再審査を待つ(通常2〜5営業日)
この間、貨物は港のCFSに留まります。フリータイム(無料保管期間)を超えると保管料が発生します。不備の修正に時間がかかる場合は、フォワーダーにフリータイムの延長が可能か確認してください。
出荷前書類チェックリスト
- インボイスの表題が「COMMERCIAL INVOICE」になっているか(PROFORMA INVOICEになっていないか)
- 品名が具体的に記載されているか(GOODS・PARTSなどの曖昧な表記になっていないか)
- 単価×数量=合計金額が正確に計算されているか
- 原産国が記載されているか
- 荷送人・荷受人の正式名称・完全住所が記載されているか
- インボイスとパッキングリストの品名・数量・単位が一致しているか
- パッキングリストの重量・容積が梱包後の実測値で記載されているか
- 段ボール番号と各段ボールの内訳が記載されているか
- HSコードはインボイスに記載する場合、日本の輸入統計品目表で確認したコードか
- RCEPを活用する場合、原産地証明書の取得を工場に依頼しているか
通関トラブルの全体像を確認する
案件の条件を相談したい方へ
「書類の不備で通関が止まった」「工場への指示方法を相談したい」など、状況をそのまま書いてください。
