中国輸入のインコタームズ完全ガイド|FOB・EXW・CIF・DDPの選び方と費用への影響
サプライヤーから届いた見積書に「FOB Guangzhou」「CIF Yokohama」と記載されていても、その意味を正確に把握していない担当者は多いです。インコタームズは「どこまでが工場の費用負担で、どこからが自社の費用負担か」を決めるルールです。これを理解せずに発注すると、想定外のコストが後から発生します。
本記事では中国輸入で使われるFOB・EXW・CIF・DDPの4条件について、費用負担の分岐点・リスクの移転タイミング・実務上の注意点を解説する。DIGISHIPのオールイン料金がどの条件をベースにしているかも明記します。
インコタームズと密接に関係する見積書の読み方についてはフォワーダー見積書の読み方、総輸入コストの把握については輸入コストの全体構造も合わせて参照してほしいです。
1. インコタームズとは何か
インコタームズ(Incoterms)は国際商業会議所(ICC)が定めた貿易条件の国際規則だ。現行版はIncoterms® 2020(2020年1月発効)で、11の条件が定義されています。
インコタームズが規定するのは次の2点です。
- 費用負担の分岐点:どの地点まで売主(工場・サプライヤー)が費用を負担し、どこからが買主(自社)の負担になるか
- 危険負担の移転タイミング:商品の滅失・損傷リスクがどの時点で売主から買主に移るか
インコタームズは輸送費の範囲を決めるルールであり、所有権の移転や支払条件は別途定める必要がある点に注意します。
インコタームズの詳細な規定についてはJETRO インコタームズ解説も参照します。
2. 中国輸入で使われる4条件の概要
中国から日本への輸入で実際に使われる条件はほぼ4つに絞られます。
| 条件 | 英語表記 | 費用負担の分岐点 | 利用頻度 |
|---|---|---|---|
| EXW | Ex Works | 工場の門を出た瞬間から買主負担 | やや少ない |
| FOB | Free On Board | 中国の積出港で本船に積んだ時点から買主負担 | 最も多い |
| CIF | Cost, Insurance and Freight | 日本の仕向港に到着するまでは売主負担 | 多い |
| DDP | Delivered Duty Paid | 日本の指定場所(倉庫・工場)まで売主負担 | 少ない(EC・代行業者向け) |
3. FOB(本船渡し)
FOBの費用負担の流れ
【FOBの費用負担イメージ】
工場 → 中国国内トラック → 輸出港CFS/CY → 【本船積込時点で買主負担に切替】 → 海上輸送 → 日本仕向港 → 輸入通関 → 国内配送 → 納品先
売主(工場)負担:工場〜本船積込まで
買主(自社)負担:本船積込〜日本納品先まで
FOBの特徴
- 中国輸入の商取引で最も一般的な条件
- 本船に積んだ時点(船上)でリスクが売主から買主に移転する
- 海上運賃・日本の通関費用・国内配送費はすべて買主(自社)が手配・負担する
- フォワーダーへの依頼はFOBの状態で行う。つまりサプライヤーが中国の港まで貨物を持ち込んだ後、フォワーダーが船積み以降を担当する
FOBが適している場面
フォワーダーを自社で選定・固定したい場合に適している。使い慣れたフォワーダーを利用することで、サービス水準と料金の安定が図れます。DIGISHIPのオールイン料金はFOBベースで計算されます(詳細は後述)。
4. EXW(工場渡し)
EXWの費用負担の流れ
【EXWの費用負担イメージ】
工場 → 【工場出荷時点で買主負担に切替】 → 中国国内トラック → 輸出港CFS/CY → 海上輸送 → 日本仕向港 → 輸入通関 → 国内配送 → 納品先
売主(工場)負担:工場内での積込補助のみ
買主(自社)負担:工場の門を出た瞬間〜日本納品先まで
EXWの特徴
- 売主の義務が最も少ない条件。工場構内で貨物を引き渡した時点で売主の責任は終わる
- 中国の輸出通関手続きも買主(自社)が手配しなければならない
- 中国国内の輸送費用(工場→港)もすべて買主負担
EXWの注意点
中国の輸出通関は原則として中国の法人または資格を持つ者が行う必要があります。日本の荷主が直接手続きできないため、中国現地に代理人(フォワーダーの中国拠点)を立てる必要があります。EXWを選ぶ場合、フォワーダーが中国国内での輸送から輸出通関まで一貫して対応できるかを事前に確認するようにします。
EXWとFOBの費用の実質的な差は「中国国内輸送費+輸出通関費」の負担者が誰かです。この分を自社でコントロールしたい場合はEXWを選ぶが、一般的には手配の手間が増えるためFOBを選ぶ方が実務上は合理的なことが多いです。
5. CIF(運賃保険料込み条件)
CIFの費用負担の流れ
【CIFの費用負担イメージ】
工場 → 中国国内トラック → 輸出港CFS/CY → 海上輸送 → 【日本仕向港着時点で買主負担に切替】 → 輸入通関 → 国内配送 → 納品先
売主(工場)負担:工場〜日本仕向港着まで(海上運賃+保険料込み)
買主(自社)負担:日本仕向港での荷卸し以降〜日本納品先まで
CIFの特徴
- 工場が海上運賃と保険を手配して、日本の指定港まで届けてくれる条件
- インボイス金額に運賃と保険料が含まれている(一見すると「送料込みで安い」と感じやすい)
- 日本側の費用(輸入通関・CFS・THC・デバンニング・国内配送)は買主負担
CIF価格は課税価格の基礎です。関税の具体的な計算方法は 関税計算ガイド で解説しています。
保険の種類と判断基準は 貨物海上保険の選び方 で解説しています
CIFで気をつけるべき点
CIFでは工場が海上運賃を手配するが、工場は「最安値のキャリア」を選ぶとは限らないです。サービス品質や遅延リスクに関係なく最も安いキャリアを選ぶケースがあります。また工場が組んでいる運賃の中にマージンが含まれている場合もあります。
工場提示のCIFインボイス金額を単純にFOB価格と比較して「安い」「高い」を判断するのは危険だ。次章で詳しく説明します。
6. DDP(関税込み持込渡し)
DDPの費用負担の流れ
【DDPの費用負担イメージ】
工場 → 中国国内トラック → 輸出港CFS/CY → 海上輸送 → 日本仕向港 → 輸入通関 → 国内配送 → 【指定場所到着で買主負担に切替】 納品先
売主(工場)負担:工場〜日本の指定場所まで(関税・消費税も含む)
買主(自社)負担:荷受けのみ
DDPの特徴と注意点
- 売主の負担が最も大きい条件。関税・輸入消費税も含め、すべての費用を工場が負担する
- 一見すると買主にとって便利だが、日本の輸入通関の名義が問題になる
- 日本の税関は「日本で営業所を持つ者」が輸入者として申告する必要がある。中国の売主が直接申告できないため、実態上は輸入代行業者を通じた形になることが多い
- 消費税の仕入税額控除が複雑になるケースがある(輸入者名義と代金支払者が一致しない場合)
非居住者が日本に輸入する際、原則として日本国内に住所を有する者が輸入者となる必要があります。しかし、税関事務管理人(ACP)を定めることで、非居住者自身が輸入者(Importer of Record: IOR)として税関手続きを進めることが可能になります。
ACPは、非居住者である輸入者に代わって税関への届出や連絡を行う役割を担いますが、関税や消費税の納税義務はあくまで輸入者である非居住者にあります。DDP条件で輸入を行う場合、売主が輸入者となるため、売主が非居住者であればACPの選定が必要です。
DDPは小口の輸入代行や越境ECで使われることが多い。継続的に業務輸入を行う法人にとっては、通関の透明性と仕入税額控除の確実性の観点からFOBが適している場合がほとんどです。
7. 費用負担の分岐点:4条件の比較表
| 費用項目 | EXW | FOB | CIF | DDP |
|---|---|---|---|---|
| 中国国内輸送費(工場→港) | 買主 | 売主 | 売主 | 売主 |
| 中国側輸出通関費用 | 買主 | 売主 | 売主 | 売主 |
| 中国側CFS・搬入費 | 買主 | 売主 | 売主 | 売主 |
| 海上運賃 | 買主 | 買主 | 売主 | 売主 |
| 海上保険料 | 買主 | 買主 | 売主(最低限) | 売主 |
| 日本側THC・CFS・デバンニング | 買主 | 買主 | 買主 | 売主 |
| 日本側輸入通関費用 | 買主 | 買主 | 買主 | 売主 |
| 関税・輸入消費税 | 買主 | 買主 | 買主 | 売主 |
| 日本国内配送費 | 買主 | 買主 | 買主 | 売主 |
※ 緑色は売主(工場・サプライヤー)の費用負担。白は買主(自社)の費用負担。
この比較表から明らかなように、EXW→FOB→CIF→DDPの順に売主の費用負担が増える。一方で買主側のコントロールはEXWが最大、DDPが最小になります。
THC・CFS・デバンニング費用の詳細については港湾費用の内訳で確認できます。
📦 FOBベースの輸送費を即座に確認する
DIGISHIPの料金計算ツールはFOB条件での輸送費(海上運賃・通関・国内配送を含むオールイン)を提示する。工場がFOB価格を提示していれば、ここから総輸入コストを試算できる。
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8. 「CIF提示の落とし穴」:工場がCIFで見積もってくる場合の注意点
中国のサプライヤーが自発的にCIF条件で見積もりを提示してくることは少なくない。「送料込みだから楽」と感じる担当者もいるが、継続的に業務輸入を行う事業者にとってはFOBの方が有利なケースが多い。理由を具体的に説明していきます。
落とし穴1:港着後の費用が別途発生する
CIF条件は「日本の指定港に貨物が到着するまで」が売主負担だ。港に着いた後は買主の費用になる。具体的には以下の費用が別途発生します。
- THC(ターミナルハンドリングチャージ):日本側の港での荷役費用
- CFS費用:LCL貨物の場合の仕分け・保管費用
- デバンニング費用:コンテナから取り出す作業費
- 輸入通関費用
- 国内配送費(港→倉庫・工場)
工場のCIF見積もりは「日本の港まで」であって「日本の倉庫まで」ではない。この認識のズレが追加費用の発生につながります。
落とし穴2:CIFインボイスは課税価格のベースになる
関税の課税価格はCIF価格(輸入港着の価格)が基準です。工場がCIF条件でインボイスを発行した場合、そのインボイス金額がそのまま課税価格の参照になります。一方でFOBで取引してフォワーダーを通じてCIF価格を計算する場合、海上運賃の実勢単価が課税価格に反映されます。
工場が高めの海上運賃でCIFインボイスを発行している場合、課税価格が高くなり結果として関税・消費税の負担が増える可能性があります。
落とし穴3:フォワーダーを自社で選べない
CIF条件では売主(工場)が海上輸送を手配する。つまり船会社・フォワーダーの選択権が工場にある。工場が選んだキャリアのサービス品質・スケジュールが自社の納期管理に直結するが、コントロールができないです。
スペース不足・遅延・書類不備などの問題が発生した場合でも、フォワーダーとの直接交渉ができないため対応が後手に回りやすいです。
落とし穴4:保険がICC(C)条件の最低限になりがち
CIF条件では売主が保険を手配するが、インコタームズ2020ではICC(C)(最低限の補償)で足りるとされている。ICC(A)(オールリスク)との補償範囲の差は大きいが、工場はコスト削減のためにICC(C)で加入することが多いです。高額品を輸入する場合は保険条件を確認し、必要に応じて自社で追加加入することを検討する必要があります。
まとめ:CIF提示を受けたときの対応
工場からCIF見積もりが来た場合、以下の確認を行うことを推奨します。
- CIF価格からFOB価格への換算を依頼する(または工場に別途FOB価格での見積もりを求める)
- 工場が使っている船会社・フォワーダーを確認する
- 日本側の港着後費用を自社のフォワーダーに試算してもらう
- 両者のトータルコストで比較判断する
見積書の各費用項目の読み方はフォワーダー見積書の読み方、オールイン料金の仕組みはオールイン料金の総額固定の仕組み、フォワーダーを乗り換える手順で詳しく解説しています。
9. DIGISHIPのオールイン料金はFOBベース
DIGISHIPのオールイン料金はFOB条件をベースとして計算される。具体的には以下の費用がオールイン料金に含まれます。
- 海上運賃(中国積出港〜日本仕向港)
- 中国側サーチャージ(BAF・CAF等)
- 日本側THC・CFS・デバンニング費用
- 輸入通関費用(関税・消費税の立替は別途)
- 国内配送費(港〜指定倉庫)
オールイン料金に含まれないもの:関税・輸入消費税(課税価格に基づき別途発生)、海上保険料(任意加入)、中国国内輸送費(EXW条件の場合は別途必要)。
FOB条件でサプライヤーが港まで運んでくれていれば、DIGISHIPのオールイン料金で残りの費用が確定する。EXW条件の場合は、中国国内輸送費をDIGISHIPの手配に含められるか事前に確認が必要です。
関税と消費税の計算方法は中国輸入の関税計算ガイドで詳しく解説している。オールイン輸送費と関税・消費税を合算することで、総輸入コストを事前に把握できます。
💬 インコタームズの条件確認や費用の試算について
現在の取引条件(FOB/CIF/EXW)と物量を教えていただければ、オールイン料金の目安をお伝えできます。条件の切り替えを検討している場合も相談フォームからご連絡ください。
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10. どの条件を選ぶべきか
継続的に中国から業務輸入を行う法人・個人事業主には、FOBを基本条件とすることを推奨します。理由は以下の3点です。
理由1:フォワーダーを自社で選定・固定できる
FOBであれば、信頼できるフォワーダー(DIGISHIP等)を自社で選定し、料金・品質・サービスレベルを自社の判断で管理できる。CIFでは工場任せになります。
理由2:総輸入コストが事前に確定しやすい
FOB価格が確定すれば、フォワーダーのオールイン料金と組み合わせて出荷前に総輸入コストを試算できます。CIFは港着後のコストが別途かかるため、最終コストが確定するタイミングが遅くなる。コスト管理の観点では輸入コストの全体構造も参照してください。
理由3:通関の透明性が高い
FOBでは自社が輸入者として通関を行うため、輸入許可書の取得・消費税仕入税額控除の適用がシンプルになります。DDPのように売主が通関を代行する構造は、日本の税制上の取扱いが複雑になりやすいです。
EXWを選ぶケース
中国国内に自社の倉庫やパートナーがあり、現地での検品・梱包替えを行いたい場合に検討できる。ただし輸出通関の手配が別途必要になる点を忘れないことです。
CIFやDDPが適するケース
取引開始直後でまだフォワーダーが決まっていない段階や、少量の試験輸入をする場合には、工場任せにしてしまうCIF・DDPが手軽に見える。ただし継続的な業務輸入に移行したタイミングで、条件をFOBに切り替えることを検討してください。フォワーダーの切り替え手順についてはHSコード未確定のリスクも合わせて確認しておきましょう!
インコタームズ別の必要書類は 書類一覧 で確認できます
まとめ
- インコタームズは「どこまでが工場負担、どこからが自社負担か」を決めるルール
- FOBは本船積込時点でリスクと費用が切り替わる。中国輸入で最も一般的な条件
- EXWは工場の門を出た瞬間から買主負担。中国国内輸送と輸出通関も自社手配が必要
- CIFは日本の港着まで工場が費用を負担するが、港着後の費用(THC・通関・国内配送)は別途発生する
- DDPは全費用を工場が負担するが、日本の通関手続き・消費税処理が複雑になりやすい
- 工場がCIFで提示してきた場合、「港着後の費用」「保険条件」「フォワーダーの選択権」の3点を必ず確認する
- DIGISHIPのオールイン料金はFOBベースで計算される
- 継続的な業務輸入にはFOBが最も管理しやすい条件
📦 FOBベースのオールイン料金を確認する
出荷地・仕向地・物量を入力するだけで、FOBベースのオールイン料金(海上運賃+通関+国内配送)の目安を即座に提示する。関税は別途関税計算ガイドで試算できる。
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免責事項
本記事の内容は輸入通関に関する一般的な情報です。通関の最終判断は税関に帰属するため、本情報は許可を保証するものではありません。インコタームズの解釈・適用については取引の実態と契約書を基に専門家に確認することを推奨します。
