中国輸入のインコタームズ|FOB・CIF・EXWの違いと費用負担

中国輸入のインコタームズは、FOB・CIF・EXWという三文字だけで選んではいけません。

確認すべきなのは、誰が輸送を手配するか、どの地点まで費用を負担するか、どこで貨物の危険が移るかです。指定場所・指定港と適用版まで確認し、売買契約書、Commercial Invoice、輸送見積書の条件を一致させます。

この記事では、中国から日本へ業務輸入する法人・個人事業主向けに、FOB・CIF・EXW・FCA・DDPの違いを、輸送手配と費用負担の観点から整理します。

インコタームズで決まること、決まらないこと

インコタームズは、国際商業会議所(ICC)が定める11の取引規則です。売主と買主の間で、貨物の引渡しに関する作業、費用、危険の分担を明確にします。

インコタームズで整理すること 別の契約・制度で決めること
引渡し地点と危険の移転時点 商品の所有権が移る時点
主な輸送を誰が契約するか 前払い、後払い、信用状などの支払条件
輸出・輸入手続きを誰が担うか 関税率、輸入消費税率、課税価格
運賃、保険、荷役等の費用分担 品質保証、検収、契約違反時の責任

インコタームズは、商品の所有権移転を直接決める規則ではありません。支払条件も直接決めません。関税率や輸入消費税率も決めません。

これらは、売買契約、決済条件、関税法令等で別に確認する必要があります。

費用負担と危険負担は同じ地点とは限らない

CIFでは、売主が指定仕向港までの海上運賃と保険料を負担します。一方、貨物の危険は、中国側の船積港で本船に積み込まれた時点で買主へ移ります。

「売主が運賃を負担する区間」と「売主が危険を負う区間」は、必ずしも一致しません。

指定場所・指定港を確認する理由

「EXW China」「FOB China」「CIF Japan」だけでは、引渡し地点と費用範囲を特定できません。

  • EXW:工場または倉庫の正確な住所
  • FCA:運送人へ引き渡す指定倉庫・ターミナル
  • FOB:中国側の指定船積港
  • CIF:日本側の指定仕向港
  • DDP:日本側の指定納品先

契約書には、次のように「三文字+指定場所・港+適用版」を記載します。

  • EXW 工場名・住所, China, Incoterms® 2020
  • FCA 指定倉庫またはターミナル, China, Incoterms® 2020
  • FOB Shanghai Port, China, Incoterms® 2020
  • CIF Yokohama Port, Japan, Incoterms® 2020
  • DDP 日本側の指定納品先, Japan, Incoterms® 2020

FOB・CIF・EXW・FCA・DDPの比較

条件 主輸送の手配 危険が移る主な地点 輸出手続き 輸入手続き
EXW 買主 指定場所で貨物が引渡し可能になった時点 買主側で手配 買主
FCA 買主 指定場所で運送人等へ引き渡した時点 売主 買主
FOB 買主 指定船積港で本船上に積み込まれた時点 売主 買主
CIF 売主 指定船積港で本船上に積み込まれた時点 売主 買主
DDP 売主 指定仕向地で荷卸し前の状態で引き渡す時点 売主 売主

上表はIncoterms® 2020の基本的な整理です。実際の費用範囲は、指定地点、運送契約、売買契約の追加条件によって変わります。

EXW|中国側の集荷と輸出手続きを確認する

EXWは「Ex Works」の略で、日本語では工場渡しと呼ばれます。

売主は通常、自社工場や倉庫で貨物を引渡し可能な状態にします。買主は、その地点からの集荷、国際輸送、輸入手続きを手配します。

車両への積込みも、原則として買主側の費用と危険です。

EXWで確認すること

  • 正確な工場住所と集荷可能時間
  • 車両への積込みを誰が行うか
  • 積込費用を誰が負担するか
  • 中国側の輸出者名義
  • 輸出申告を誰が手配するか
  • 工場から港・空港・指定倉庫までの中国国内運賃
  • 輸出に必要な商品資料を誰が準備するか

EXWでは、売主に輸出手続きの義務がありません。しかし、日本の買主が中国国内で直接すべての輸出手続きを行えるとは限りません。

中国側で集荷と輸出申告を実行できるフォワーダーや代理人がいるか、サプライヤーがどこまで協力できるかを確認します。

売主が輸出手続きを行い、指定場所で運送人へ引き渡せる場合は、FCAの方が実際の取引に合うことがあります。

FCA|コンテナ貨物で検討する条件

FCAは「Free Carrier」の略です。売主は輸出手続きを行い、指定場所で買主が指定した運送人等へ貨物を引き渡します。

指定場所が売主の工場の場合は、売主が買主側の集荷車両へ積み込んだ時点で引渡しとなります。指定場所がターミナルや倉庫の場合は、その場所まで売主が運び、運送人等へ引き渡します。

コンテナ貨物は、本船へ積み込まれる前にターミナルや混載倉庫で運送人へ引き渡されることがあります。

そのため、ICCの選択手順では、コンテナ輸送や複合一貫輸送ではFCAを検討し、FOBは本船上で費用と危険を分けたい一般貨物やばら積み貨物等に使う考え方が示されています。

現行契約がFOBだから直ちに変更するのではなく、実際の引渡し地点が本船上なのか、ターミナルや倉庫なのかを確認して判断します。

FOB|本船積込みまでを売主が手配する

FOBは「Free On Board」の略で、日本語では本船渡しと呼ばれます。海上輸送と内水輸送で使用する条件です。

売主は中国側の輸出手続きを行い、指定船積港で貨物を本船上に積み込みます。その時点で引渡しが完了し、貨物の危険が買主へ移ります。

工程 主な負担者
工場から中国側港までの輸送 売主
中国側の輸出手続き 売主
指定船積港での本船積込み 売主
海上運賃 買主
貨物保険 買主
日本側の輸入手続き 買主
関税・輸入消費税 買主
日本国内配送 買主

FOBでは、買主が海上輸送以降のフォワーダーを選び、輸送見積を取得できます。

ただし、「FOB Shanghai」と記載するだけでは不十分です。上海のどの港・ターミナルを使うか、LCLの場合はどの混載倉庫へ搬入するかも確認します。

サプライヤーのFOB価格と、買主側フォワーダーの見積書に、同じ中国側費用が重複していないかも確認してください。

CIF|海上運賃・保険込みでも日本到着後は別確認

CIFは「Cost, Insurance and Freight」の略です。海上輸送と内水輸送で使用する条件です。

売主は、指定仕向港までの海上運賃と所定の貨物保険を手配します。ただし、貨物の危険は、中国側の指定船積港で本船に積み込まれた時点で買主へ移ります。

CIFでも、日本到着後の費用がすべて含まれるとは限りません。

  • ターミナル関連費用
  • CFS関連費用
  • 書類費用
  • 輸入通関料
  • 関税・輸入消費税
  • 税関検査や他法令確認の費用
  • 保管料
  • 日本国内配送費

仕向港での荷卸し費用等も、売主が契約した運送契約に含まれるかどうかで負担が変わる場合があります。

CIFという三文字だけで判断せず、見積書に何が含まれ、何が別途請求されるかを確認してください。日本到着後の費用は、中国輸入の港着後費用で詳しく整理しています。

CIFで確認する4項目

  • 日本側の指定仕向港
  • 売主が契約したフォワーダーと運送条件
  • 貨物保険の補償範囲と保険金額
  • 日本到着後に買主が負担する費用

Incoterms® 2020のCIFで売主に求められる保険は、原則として最低限の補償です。高額品、壊れやすい商品、精密機器等では、補償範囲が十分かを確認します。

DDP|輸入者名義と税務処理を曖昧にしない

DDPは「Delivered Duty Paid」の略で、日本語では関税込み持込渡しと呼ばれます。

売主は、指定仕向地までの輸送を手配し、輸出・輸入手続きと関税等を負担します。

買主の手配範囲は小さく見えますが、売主が日本で輸入手続きを適法に実行できるかは別に確認する必要があります。

  • 日本側の輸入者として誰が申告されるか
  • 輸入許可通知書を誰が取得するか
  • 輸入許可通知書を買主が保管できるか
  • 関税・輸入消費税の納付者と請求方法
  • 輸入消費税の税務処理に必要な証憑を入手できるか
  • 規制品に必要な許可・届出を誰が行うか
  • 指定納品先で荷卸しを誰が行うか

輸入者名義や輸入許可通知書が不明なままでは、税務処理、在庫証憑、輸入実績の管理に問題が出る可能性があります。

条件別の費用負担比較

費用・手続き EXW FCA FOB CIF DDP
中国国内輸送 買主 指定場所による 売主 売主 売主
中国側輸出手続き 買主側で手配 売主 売主 売主 売主
主な国際輸送 買主 買主 買主 売主 売主
貨物保険 買主が判断 買主が判断 買主が判断 売主が所定の保険を手配 売主が判断
日本側輸入手続き 買主 買主 買主 買主 売主
関税・輸入消費税 買主 買主 買主 買主 売主
日本国内配送 買主 買主 買主 買主 売主

この表は基本的な分担を示したものです。CIFの到着地費用等は運送契約によって扱いが変わる可能性があります。最終的には、売買契約書と輸送見積書を確認してください。

インコタームズと輸送見積書は別に確認する

売買条件と輸送見積の対象範囲は、同じものではありません。

売買契約がFOBでも、フォワーダーの見積が日本港止まりなら、日本国内配送は含まれません。CIFでも、日本側の港着後費用と国内配送だけを別会社へ依頼する場合があります。

  1. 売買契約書または発注書に、三文字、指定場所・港、適用版を記載する
  2. Commercial Invoiceも同じ表記にする
  3. 輸送見積書に、集荷地点、輸出港・空港、輸入港・空港、最終配送先を記載する
  4. 各費用を「含む」「別途」「条件発生」に分ける
  5. 危険の移転地点と貨物保険の開始・終了地点を照合する
  6. 条件を変更した場合は、契約書、Invoice、見積書を同時に更新する

見積書チェッカーで取引条件ごとの見積範囲を確認する

費用項目の比較方法は、フォワーダー見積書の比較方法で確認できます。輸送区間全体を整理する場合は、中国輸入・輸送見積設計ツールを利用してください。

中国の工場へ確認する質問

  • 提示価格のインコタームズは何ですか
  • 指定場所・指定港はどこですか
  • Incoterms® 2020を使用していますか
  • EXWの場合、正確な集荷住所と積込条件は何ですか
  • 中国側の輸出申告は誰の名義で手配しますか
  • FOBの場合、指定船積港と搬入先はどこですか
  • CIFの場合、指定仕向港と保険の範囲はどこまでですか
  • 現在の価格に含まれない中国側費用はありますか
  • 梱包後のカートン数、総重量、各箱寸法は確定していますか
  • Commercial InvoiceとPacking Listの確定版はいつ発行できますか

取引条件の選択手順

  1. 実際の引渡し地点を決める。工場、指定倉庫、ターミナル、本船上のどこかを確認します。
  2. 中国側の輸出手続きを確認する。買主側で実行できない場合は、EXWのまま進めません。
  3. 輸送形態を確認する。コンテナ・複合輸送ではFCA、本船上での引渡しならFOB等を比較します。
  4. 運賃負担と危険移転を分けて確認する。CIFのように両者が異なる条件があります。
  5. 日本側費用を加えて比較する。港着後費用、輸入通関、関税・輸入消費税、国内配送を確認します。
  6. 契約書類の表記を統一する。三文字、指定場所・港、適用版を一致させます。

発注前チェックリスト

  • 三文字だけでなく、指定場所・指定港とIncoterms® 2020を記載した
  • 費用負担と危険負担を分けて確認した
  • 所有権と支払条件を売買契約で別に決めた
  • EXWの中国側集荷、積込み、輸出手続き担当を決めた
  • コンテナ貨物でFCAを比較した
  • FOB・CIFが海上・内水輸送用であることを確認した
  • CIFの日本到着後費用を確認した
  • DDPの輸入者名義と税務証憑を確認した
  • 契約書、Commercial Invoice、輸送見積書の表記を一致させた

条件がそろった場合の輸送相談

中国から日本への業務輸送で、1回200kg以上、商品内容、中国側の出荷地、日本側の配送先、重量の目安が分かる場合は、cn-import.jpの輸送相談フォームから相談できます。

相談内容はDIGISHIPへ共有され、最初の連絡からDIGISHIP担当者が対応します。

参考情報